2014.06.16

全米オープンゴルフ

20140616_01全米オープンゴルフというと、浅くてもくるぶしが隠れるほどの深いラフでのセッティングで必ず行われるのですが、今年の全米オープンは “ラフが無い” との前評判だったので、かつてのマスターズのようなセッティングを想像して、練習ラウンドの初日と2日目を視察してきました。

場所はノースカロライナ州にあるパイン・ハースト No.2。パイン・ハースト リゾート&カントリークラブという施設にはNo.1からNo.8まで8つもの18ホールのゴルフコースがあり、会場のNo.2は元々その中でも最もコースレートの高い難コースなのですが、”ラフが無い” という状態は当初の想像が根底から覆えるものでした。印象としては「荒れ地」です。ラフに相当する場所は基本的に砂地で、一株から無数の細く長い茎が伸びるwire grassと呼ばれる草が無数に点在しており、さらに奥は長さ30cmもある枯れた松葉の絨毯の上に巨大な松ぼっくりがゴロゴロ落ちている状態。主催者USGAの関係者と話をしてみたら、彼らはそこをラフとは呼ばず “natural area” という言い方をしていました。ペイン・スチュアートが優勝した1999年の同コースで開催された全米オープンでは「普通に」ラフがあったのに、誰がこんな荒れ地に改造したのか調べてみると、それは歴代マスターズチャンピオンでもあるベン・クレンショーとコース設計家のビル・クアでした。107年前にこのコースを設計し、死ぬまで自身の最高傑作であったこのコースの近くに住んだ名設計家ドナルド・ロスの当初の意図に沿って「元に戻した」のだそうです。 こんなコースで今週は男子の全米オープン、来週は女子の全米オープンが連続して同じコースで開催されるとあって、町は全米オープン一色で盛り上がっていました。20140616_02 20140616_0320140616_04練習ラウンド初日の月曜日はさすがに大物プレーヤーのラウンドは少ない中、多くのギャラリーを引き連れていたのは今年2着目のグリーンジャケットを手にしたBabba Watson選手でした。 練習ラウンドでは本番の試合に比べると緊張感は低いものの、試合に備えての準備が目的なので、ティーショットからグリーン上まで一人で複数のボールを何発も打つ光景を見ることができる、練習ラウンドならではの良さが味わえます。 意図的に曲がるボールを打つことで有名なWatson選手は、ショットの曲がり具合や攻め方を確かめるためか、セカンドショットを2発、3発と打って曲がり方の違うショットを披露してくれました。

2日目の火曜日には、つい1週間前に米ツアーで初優勝した松山英樹選手が、その試合でプレーオフを戦ったケビン・ナ選手と同じ組で和気あいあいとした雰囲気の中にも真剣な表情でアウトの9ホールをラウンドしました。 優勝した試合で折れてしまったドライバーの代わりに新調したと思われる新しいドライバー複数本をバッグに入れ、ラウンド前のドライビングレンジでどれが一番合っているのかを確かめてからのハーフラウンドでしたが、8番ホールのティーショットを打った後、「やっと合った」と帯同していたクラブメーカーの人に言っているのが聞こえました。20140616_05

日本で行われた予選を突破して出場する日本人3選手は2人の韓国人選手と一緒になんと5人でラウンドしていました。 帯同するキャディー、メーカーの担当者、コーチ、通訳などを含めてこの組だけロープ内に異常に人が多いので目立っていました。 日本人はどこでも「群れる」のが好きなようです。

さて、会場内にはコース脇を含めていたるところに巨大な白いテントが軒を並べて建っていました。大半のテントは様々な企業のホスピタリティー施設で、招待した顧客が自由に利用できるようになっています。 主催者であるUSGAのテント内では、アニカ・ソレンスタム、ポール・エイジンガーといったかつての名選手などの講演会が常時開かれていたり、選手用の練習グリーンのすぐそばには子供達がパターで遊べる広大なエリアも用意されていたりと、ゴルフ観戦の合間にも楽しめるような工夫が随所にみられました。 宿泊したホテルで出会った老夫婦はインディアナ州から観戦に来たという米国人で、全米オープンは毎年欠かさず観戦に訪れている由、全米オープンは施設がとても充実しているのが良い、と言っていました。 日本の大会運営にも参考になることが多いのでは、と思いました。

男子の大会は、日本時間の今朝、マーティン・カイマー選手の優勝で幕を閉じましたが、同時に次週の女子の大会が開幕しました。 男子のトッププレーヤー達が七転八倒した超難コースで、今度は女子がどんなプレーを展開するのか楽しみです。

 

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