今年の桜
例年より早く開花した今年の桜は、毎年マスターズ開幕と時期が被るために見損ねてしまう当社の現地出張者にとっては、思いがけない幸せを与えたことと思います。さらに、今年はオーガスタの花々までも開幕に合わせるように見頃となったため、行く先々で美しい景色に出会えるなんて羨ましい限りです。(昨年現地に行かせてもらった際は、すでに大会期間中は見頃を過ぎていましたので……)
さて、最近なんとなく思いを馳せる機会が多かった「桜」に関して、個人的なエピソードをお話したいと思います。
一つ目は、私が通っていた小学校の「桜」について。市内にあるいくつかの小学校の中でも桜の木が多いことで有名です。毎年散歩がてら見に行くのですが、都内の開花ニュースを聞きつけて、はやる気持ちで向かった3月末は、まだ6分咲きといったところでしょうか。
昔の話になりますが、私の小学校入学式はまさに満開の桜が迎えてくれました。当時の校長先生が、「校庭に多くある桜の木の中から、あなたのお気に入りの桜の木を見つけてください」と話されていたのが印象的で、今も覚えています。式が終わった後、私はさっそくお気に入りを見つけて(幹が太く、左右に広がる枝がバランスのよい桜だったと思います)、その下で家族と写真を撮りました。
二つ目は、今年家族が卒業した、とある大学の卒業式に参列して聞いた総長の式辞。「言葉はよくコミュニケーションのツール、道具と思われがちですが……」と始まったお話は、ジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』を引き合いに出しながら、言論、ひいては思考に対する統制について語られました。言葉の自由が脅かされる恐怖、それは現代社会の諸問題にも言及しているようで、とても興味深く聞くことができました。『一九八四年』とは別に、言葉に関する一節で思い出したのは、大岡信による評論『言葉の力』です。詳しい内容は割愛しますが、その中では、桜を使ったという鮮やかなピンクの染め物の色が、実は花びらではなく、あの黒くごつごつとした木の皮から取り出したものであった――といったエピソードが語られます。これには著者のみならず、読んでいた私も驚きましたし、思わず桜の木を、その内側に流れているであろうピンク色を想起せずにはいられませんでした。題名のとおり、言葉の美しさの連想として論じられるこのエピソードですが、桜の鮮烈なイメージを想起させることで、よりその奥深さを実感させてくれます。
最後に、私のここ最近の朝の通勤について。4月といえばマスターズ。当社に限っては、ややもすれば慌ただしく過ぎ去ってしまいそうなこの時期ですが、毎朝をこんな景色で迎えられるならば、心は晴れやかなものになります。
さて、今年のマスターズチャンピオンが決定しました。グリーンジャケットに袖を通す、ポロシャツの色は、オーガスタに咲くアザレアを意識したのでしょうか?その濃いピンク色は、私にとっては見慣れた八重桜をも感じさせました(笑)
(追記)
パトリック・リードのピンクシャツには、こんな理由があったそうです…!
◆流儀にこだわるパトリック・リードのマスターズ初制覇への歩み方【舩越園子コラム】(ALBA.Netより)