ミャンマー時間はゆるやかに流れ
GWの休みを利用してミャンマーを旅してきました。
数年前に民主化を遂げたミャンマーは、新聞や経済誌などで投資や外国企業進出の話題を目にしない日はないほど、その経済の発展が注目を集めています。「アジア最後の秘境」とも言われるこの国が急速に変化を遂げようとする中で、グローバル化の波にのまれて個性を失わないうちに素朴な姿を見ておきたい、と思ったことが旅のきっかけでした。
ミャンマーの玄関口ヤンゴンのほか、仏塔遺跡群で有名なバガン、独特の湖上生活様式で観光客を集めるインレー湖の3か所を巡った9日間の個人旅行でしたが、事前の準備不足もあり最初の目的地とホテルしか決めていなかったことは結果的に正解でした。乗るはずだった国内線の飛行機は3回のうち2回が直前にキャンセルとなり、何もない地方空港で5時間待ちぼうけになったことも。細かく予定を決めていたら全てが後ろ倒しになっていたことでしょう。 他の旅行者から話を聞き、急遽予定を変更することも面白く、ゆとりをもったスケジュールの中で柔軟に対応することこそがこの国の旅のスタイルには合っているのだと実感しました。
スマートフォン普及率は意外にも高かったですが、大都市ヤンゴンはともかく、地方ではスマホだけが、時代の遥か先端を行くアイテムのように映りました。Wi-Fiは使える所が限られており、停電も当たり前のように起こる状況。雨季には道路の冠水もつきものだそうで、インフラ整備はまだまだのようです。ただ、停電が起こっても騒ぐような人は皆無。再び灯りが灯るのを静かに待つ時間もミャンマーの時の流れの一部なのです。
国民の約9割が仏教徒であるこの国を旅するには、僧侶へのマナーや、仏教の思想を理解することも重要でした。仏教の教えから、人前で負の感情を表に出すことははしたなく、人々に親切にしたり、分け与えたりすることで徳を積むという考え方が、この国の人々の穏やかさの礎になっているのだということを理解できました。人々は総じて優しく、我々旅行者に快く助け舟を出してくれます。大人も子供も目が合うと笑いかけてきたり、手を振ってくれる純朴さは、アジア旅に連想する強引な客引きとの戦いというイメージをあっさり覆してくれました。でもそれは「徳を得られる」という見返りを求めての行いではなく、相手を思いやったごく自然な行動であることが伝わってくるのです。
仏教遺跡群の素晴らしさや多彩なミャンマーの少数民族、ミャンマー料理から現地での面白エピソードなど、ここでは書ききれない事がたくさんありますので、興味のある方は是非お尋ねください、、というと随分ミャンマー贔屓になった様ですが、それほどに魅力の詰まった国であったことは確かです。
ミャンマーならではの特産品をスタイリッシュにデザインした商品が並ぶ雑貨店で、面白い商品を見つけました。「Myanmar iPad」というタイトルで、iPad大のケースに入っているのは高精細ディスプレイではなく、リンゴの書かれた木枠付きの黒板。シャレの利いたネーミングセンスに笑ってしまいましたが、この脱力感は確かにミャンマーを象徴しています。 私も日頃スマホに夢中になったり、目の前の事ばかりに気を取られる事が多くあります。もっと周りを見まわして、困っている人を見つけたら進んで手助けに行けるような、心のゆとりを持つべきだと、当たり前のことのように感じても普段なかなかできていない自分の行動を省みる機会にもなりました。同時に、この先どれほど発展しようとも、ミャンマーはいつまでも素朴で、穏やかさを感じられる場所であり続けてほしいと、勝手な願望を抱きながら、心の中で再訪を誓ったのでした。