Phantom of the Open “全英オープンの怪人”
いよいよ今週はゴルフの全英オープンですが、Maurice Flitcroft(モーリス・フリットクロフト)と言うゴルファーの名前をご存知でしょうか?
去年出版された”Phantom of the Open” と言う本で紹介されている実在した主人公です。 オペラ座の怪人ならぬ、同じファントムでも”The Open” すなわち全英オープンの怪人と言うタイトルがついているので、さぞ凄いゴルファーだったのかと思うとそれが全くの期待はずれ。 1976年のロイヤル・バークデールで開催された全英オープンの最終予選会にプロと偽ってエントリーをした伝説のゴルファーの話です。
当時46歳だったモーリスさん、ゴルフは始めたばかりで、クラブもハーフセットしか持って無いのに、最終予選会に出場した訳ですが、ちゃんとした18ホールのコースで初めてのラウンド、当然スコアーも数えてみたら”おおよそ”121! 当然同じ組の選手達からはクレームが上がり、即R&Aのオフィシャルの耳に入ると同時にトーナメントから追い出されました。再発防止の為に、R&Aも急遽予選会のエントリーのルールを作り直した程、当時は大事件だったわけです。モーリスさんの事は当時のメディアでも評判になり反体制のヒーローになったわけです。
これで話が終わるとタダのジョークで終わるのですが、モーリスさんのチャレンジは続きます。アメリカ人のプロになりすまし1978年の予選会に潜り込む事に成功。使った名前はGene Paycecki 。これジーン・サラゼンならぬジーン・ペイチェッキー、即ちペイチェック=給料支払小切手!! エントリーを受け付けた担当者も名前を見ればジョークと分かるのでしょうが、まんまと予選会のティーグラウンドに立ったモーリスさん、いやペイチェックさん、当然2年の間にゴルフの腕前は上達するハズも無く数ホールプレーをする間に競技委員に気がつかれると、あっと言うまに姿を消したわけです。 ここらが”ファントム”の名前の以来かもしれません。
それでも諦めないのがモーリスさん。5年後にはGerald Hoppy として再びエントリー。アウト63叩いてその名の通り”HOP” 跳んで逃げました。 1990年には今度はスイスの Beau Jolleyと言う名前を使ってエントリー、これも続けて読むとボジョレー!!ここまで来るとR&Aの担当者も居眠りをしていたとしか考えられません。さすがにArnold Palmtree アーノルド・パームツリー(ヤシ)の名前のエントリーは却下されたようですが、、偽名や変装で何度もチャレンジしたそうです。
いずれにせよ、モーリスさんの名前はイギリスのゴルフ界ではUnderdog, すなわち”負け犬”の代名詞になったぐらいですが、イギリス人のエキセントリックなユーモアのセンスを実際に行動したと語られています。写真は本の中で唯一あったモーリスさんの勇姿です。ジャマイカのボブスレーチームや、イギリス人のスキージャンプ選手 Eddie “The Eagle” さんの先駆け的な話題の人だったんですね。